何も伝えなかったら、そのまま時は過ぎるのかもしれない。
普通に楽しく生きていけるのかもしれない。
でも、でもだからこそ・・・大事な人には、すべてを伝えないといけないような気がする。
わ が ま ま
「忙しい?」
「ん・・・まぁ」
「東京、次はいつ行くの?」
「あさって」
「ふぅん・・・」
大和が「海行きたい!」とうるさかったので、今日は久しぶりに海辺デート中。
・・・とは言っても、泳ぐわけじゃなくて。
浜辺で、波が来ても海水が届くか届かないか・・・って感じの場所に座って、まったりしてるだけ。
「ん〜やっぱりキレイ!沖縄の海は。毎日来たい、俺」
「来れば?」
「ん〜・・・来たいけどさ、仕事とかあるし」
「だね」
「・・・なんか今日冷たい、ちゃん・・・」
「だね」
「(認めた!?)・・・なんで?どしたの?俺、また何かした?」
「ううん、何も・・・」
「そぉ・・・?」
アタシは体育座りをして、下を向いていた。
大和は、そんなアタシを心配して、下から顔を覗き込もうとする。
いろんな角度に顔の向きを変えて、一生懸命アタシの瞳を見ようとしているけど。
そんな大和を見てたら、わざと瞳を合わせたくなくなる。
「ちゃ〜ん・・・」
「遠いよ」
「え?」
「大和が・・・1番近いのかもしれないけど、1番遠く感じる」
「そ、れは・・・仕事ばっかだから、会えなくて・・・ってこと?」
「ん・・・ねえ、遠いのヤダな・・・大和、アタシたちって付き合ってる意味あるのかな?」
普段バカばっかり言ってる大和の表情が、瞬間険しくなる。
そんな彼の顔を見て、無意識にそらしていた瞳を上へあげた。
瞳が合って、初めて大和が怒っていることに気づく。
大和は、普段出さないような低い声で言った。
「それ本気で聞いた?場合によっては怒る」
「・・・もう怒ってるじゃん」
「うん、まぁ」
「何で怒るの?」
「お前が聞いたらいけないこと聞いたから」
「・・・だって」
「付き合ってる意味?あるに決まってるでしょ、じゃないと別れてるじゃん」
「でも、だって・・・っ。アタシのこと、どうでもいいんでしょ?」
「なんで?なんでそんなこと言うの?そんなわけないでしょ」
「だって仕事ばっかじゃん!大和が頑張ってるのは分かるけど、仕事ばっかじゃん・・・っ」
ずっと我慢していたもの。
それが涙となって、頬を伝う。
大和がいくら忙しくても、ずっと会えなくても、それは彼が仕事を頑張っているからで。
応援してあげないといけないって思って、意地張って、いつも笑顔で「頑張って」と言ってきた。
でも、でもね・・・大和、アタシだって・・・。
「・・・寂しいんだよ・・・っ」
「・・・」
「ブラウン管を通してアンタの姿を見たって、そんなの全然嬉しくなんかない!むしろ辛いだけ・・・っ」
「うん・・・」
「高校のときは毎日会ってたのにっ!ずっと遊んでたのに!いつも一緒にいて・・・っ」
「・・・うん、他には?」
「恐い・・・っ」
「なんで?」
「アタシと一緒にいない時の大和は、いつも可愛い芸能人の女の人たちに囲まれてるから・・・」
「・・・ん〜。でも俺にはがいるから、他の女の子のこと、そういう風に見たことはないけど」
「でも、番号聞かれたり・・・するんでしょ・・・。涼くん、大和先輩は微妙にモテるとか言ってたし」
「(微妙に?・・・むむ、涼のやつ)いや、聞かれても教えたことないってば」
「うそばっかり」
「うそじゃない!これはマジマジですって、さん!」
チラッと大和の瞳を見た。
それに気づいた大和は、フッと微笑んで、こっちを向いて両手でアタシの頬を包み込んだ。
「大和・・・?」
「やめるよ?」
「え?」
「が、本気で俺にずっと傍にいてほしいって思うんだったら」
「やめるって・・・仕事・・・?」
「うん、お前が泣くぐらいなら、俺はレンジやめても・・・」
「だめ!だめだよ、そんなの!馬鹿っ!」
「ひどい・・・ちゃん」
頬を包んでくれている手が暖かくて、あ〜アタシは今大和と一緒にいるんだって思う。
安心する、楽になれる・・・幸せだなって感じる瞬間。
「大和」
「ん?」
「我侭言ってごめんね?」
「え?我侭ダッタノデスカ?」
「(なんでカタコトなんだろ)・・・ん、ちょっと我侭言ってみた」
「いいんじゃない?だって、我侭なんて言ったことないもんね」
「え?そう?」
「うん、でも言ってくれてもいいんだよ?別に」
「嫌いにならない?」
「ならない」
「じゃ〜・・・じゃ〜ね、もういっこ我侭言っていい?」
「ん?なに〜?」
「チューして?」
たぶんアタシは、今世界で1番我侭な女だと思う。
でも、そんなアタシの我侭を、笑顔で受け止めてくれる大和だから。
「、今度東京ついておいで?」
アタシの醜い部分も、大事な貴方にだけは、すべてすべて見せてあげようと思うのです。
fin. 05/09/18
喧嘩?もするんです(笑)
大和は鈍いからね、ちゃんと言ってあげないといけないと思いますよ。
ちゃんと話せば、大和は一生懸命考えて、正しい答えを導き出してくれると思うから。