「・・・え?弘樹、何言ってんの?」



「だからさ、俺がまだのこと好きだって言ったら・・・どうする?」











それは、頭の奥にしまっていた過去の話を思い出させる言葉で。


山内公園のベンチに座っているアタシは、彼の言っている事が理解出来なかった。















 こ く は く















「な、なにそれ・・・」

「忘れたの?」

「え・・・と、それって高校のときのこと言ってんの?」

「そう、俺言ったよね?お前のこと、ずっと好きだったって」

「・・・う、うん。でもアタシはっ・・・」



「大和と付き合ってるから、俺とは付き合えない・・・だろ?」

「・・・」






昨日電話で、弘樹に”明日10時に山内公園で”って言われた。

アタシはてっきり、レンジ全員が集まるんだと思っていたのに。

そこで待っていたのは、弘樹だけだった。







弘樹はベンチから立ち上がり、んーっと背伸びをした。

そして転がっていたサッカーボールを、足でコロコロと転がしている。








「でも、さ・・・。弘樹は、アタシが大和のこと好きなのは知ってるから、諦めるって・・・」

「言ったよ」

「なのに、何で今更・・・そんなこと・・・」

、馬鹿なんじゃないの?」

「え?」

「あの時、俺が本気でそんなこと言ったって思ってんのかよ。んなわけないでしょ」

「で、でも・・・だって、アタシと大和のこと応援するって、そう言ったよね?」

「そんなのジョークよ。なんで好きな子と、その彼氏のこと応援しなきゃなんないのさ」

「弘樹・・・」





オレンジレンジのメンバーは、昔から皆仲が良かった。


アタシはそんな彼らと家が近く、小さい頃からよく一緒に遊んでいた。

そして、ただの友達から、お互いを異性だと意識する年齢まで経ったとき。

アタシに女を意識させたのは、大和だったから。

レンジがデビューする前、弘樹に「好きだ」と言われても、アタシには弘樹は友達にしか思えなかった。






「俺はさ、ずっと隠しておこうと思ってたんだよ」

「え?」

「高校の時、告ったけど・・・本当は言うつもりとかなくて」

「うん・・・」


「でもさ、当時お前とヤマ、色々あったじゃん?覚えてる?」

「え?デビューするから別れたいとか・・・そういう話?」

「そうさ、俺マジその時、お前とヤマが付き合っているってことが許せなくて」

「弘樹・・・」


「泣かせすぎだった、マジで。好きな奴泣かせるなんて、いくらヤマでも許せなかった。相手、だし」

「でも・・・あの時は、事情が事情だし。大和の気持ちも分かるし、今じゃ何ともないよ?」

「分かってるよ。でも・・・俺なら泣かせなかった」








転がしていたボールを遠くへ蹴り、弘樹は私の手を引っ張った。

私は反動でベンチから立ち上がり、そのまま弘樹の腕の中へ倒れこんだ。

私を強く抱きしめてくれる弘樹の腕は、暖かかったけど・・・少し震えていた。









「ひ、弘樹・・・っ!?」

「ごめん!でも・・・ちょっとだけ」

「・・・うん、ごめんね、弘樹」

「今幸せなの?ヤマのことまだ好きなの?楽しい?辛くない?」

「うん、アタシは大和のこと好き。大和とずっと一緒にいたい、今すごく幸せだよ」

「そっか・・・」




弘樹は、ハハッと苦笑いをしてそのまま腕をほどいた。

そして、私の頭を軽くポンポンっと叩いて、ごめんね・・・と小さく呟いた。















「え?」

「今日あったことは忘れてね。ヤマにも言わないように!」

「う、うん・・・あの、弘樹・・・」



「あーーー!髪切ろっ!」



「は?」

「失恋したから」







髪を触りながらそう言う弘樹は、サッパリとした笑顔だったけど。

やっぱり、アタシの心のどこかには罪悪感ってぃぅか・・・煮えきれない部分があって。

何とも言えない気持ちになる。









「弘樹・・・」

、そういえばさっき涼がお前のこと探してたよ」

「え?な、なんだろ」

「行ってくれば?家ここから近いし」

「うん・・・」

「ほらほら、早く行った行った〜」

「弘樹、またね」

「ほいほーい」










アタシは小走りで公園を後にする。

後ろで弘樹がどんな表情をしているのか・・・怖くて見れなかった。







     fin. 05/09/12






弘樹ドリみたいになってしまった・・・やぁま出てないし!

でも一応大和ドリなんです、ヒロインは大和が大好きなんです^^;

大和は弘樹の気持ちは知らない・・・でも知ったらきっと苦しむから。

みんな、大和のこと大事にしてますから(笑)